【01-12教会の演劇】『アダン劇』、ことばによって獲得された自由

コメント(全9件)
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camin=KM ― 2011-11-04 03:37
すいません、コメントの名前表記が混乱してました。Camin=KM、このブログの執筆者です。
Yoshi ― 2011-11-04 12:03
早速専門の立場から色々と教えていただきありがとうございます。私は下手の横好きで、フランス語の文学について根拠のないことについて推測で書き、間違っていることが多いことを痛感しました。

>もしかするとYoshiさんはアングロ・ノルマン方言をイングランド人、すなわち英語を母語とする話者が使っていたフランス語方言だと捉えておられるのでしょうか? 

私も、アングロ・ノルマン使用者が必ずしも英語を第一言語としていたとは思っておりません。イングランドでも仏語環境で育ち、仏語を第一言語にした人がいたでしょう。また、方言特徴と書かれたり話されたりした土地が一致する、とも単純に思っていませんが、重要な指標ではあるとは思いました。ただ私自身が原語が読めないに等しいので、アングロ・ノルマンとノルマン方言が形態上ほとんど変わりなく、そして地理的にもノルマンディーからイングランドに至る広い地域で変わりなく使われていたとは、不勉強にてまったく知りませんでした。そうしますと、『アダム劇』の書かれた場所は、おそらく、そうした広い地域のどこかということになりますね。前のコメントで引用したAxtonとStevensの意見、つまりノルマンか、アングロ・ノルマンかを分ける議論をしても価値はないだろう、というのが正しいのでしょうね。

イングランドにおける仏語のひろがりについては、私は生半可な印象しか言えません。最近、英米では大きな研究テーマとして、多数の学者がイングランドの仏語使用について研究しているようで、York大学でも北米の大学と協力したプロジェクトが立ち上げられていました。今度私も少しは文献を読んでみたいテーマです。どういう視点から見るかにより仏語使用の広がりも大きく違うと思います。人口全体、ジェントリー、貴族、宮廷、等々。そして、宮廷だけをとっても、そこにいる人達は様々です。王侯貴族本人達は仏語が自由に出来る人がほとんどでしょうが、中世イングランドの貴族(aristocrats)は中世においては確か多い時で70家族くらいで、非常に数少ないとも言えます。彼らに仕えるまわりの人々についてはどうでしょうか・・・。前のコメントで書いたPaul Aebischerの序文からも分かるように、英米の学者や私達英文学をやっている者は、ついつい英語を優先して考えてしまい、イングランドにおけるフランス語の重要性を割り引いてしまう危険性があるかもしれません。

>英語がマジョリティであるならばわざわざアングロ・ノルマン方言のテクストを用意する意味が私にはよくわからない・・・


(省略されました)
KM ― 2011-11-05 04:23
いや私も古仏語の方言についてはあやしい知識しか持っていません。今回のやりとりでちゃんと勉強しなおさなければと思いました。

『アダン劇』については、アングロノルマン方言で書かれているという事柄のみから、Yoshiさんのような推論を発展させるには、ちょっと飛躍が大きすぎるのではないかという気がしました。校訂の勉強をしていれば書記方言についての言語学的素養は必須なのですけれど、あいにく私はそうした勉強をちゃんとした経験がありません。

アングロノルマン語については、イギリスの研究者による著作の日本語訳があったことを思い出しました。前に図書館で借りてみたけれども、ちゃんと理解できなくて投げ出してしまった記憶があります。また借りてページをめくってみようと思います。
Mildred K. Pope 著 ; 大高順雄,福井秀加 訳述『アングロノルマン語』東京 : 研究社出版, 1980.7。
Yoshi ― 2011-11-05 10:19
色々と教えていただき、大変刺激になりました。私も『アダム劇』がイングランドで書かれたという考えは大して強く持っているわけでなく、単にその可能性が強いという程度でしたが、今回教えていただき、「可能性がある」程度になりました。昨夜、M Dominica Leggeの、スタンダードな(?)アングロ・ノルマン文学史である"Anglo-Norman Literature and its Background" (Oxford UP, 1963)を見たら、1ページ程度で、この作品が出来た場所についての議論が整理してありました。ベディエはイングランド説を一蹴したともあります。

Popeの本、教えて下さりありがとうございます。私は同じ本かと思いますが、M K Pope, "From Latin to Modern French" (Manchester UP, 1934)を持っているのですが、古仏語を授業で取って勉強していた若い頃でも、この大冊の本は細かく専門的すぎて手に負えなかったです。私が当時、古仏語を勉強した本、E. Einhorn, "Old French: A Concise Handbook" (Cambridge UP, 1974)には、約1ページで10項目に分類してアングロ・ノルマンの方言特徴がまとめてあります。こうした資料はあるのですが、今の私は古仏語を勉強し直す余裕はないです。しかし、おかげさまで、イングランドの多言語状況については、もう少し背景を勉強しなければいけないと痛感しました。
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